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単なるIT化ではないIT武器化思考

今日の吉沢

では、IT武器化思考が、現場では実際にどのように実現されているか、実際に導入した医療関係施設であるB社の事例を見ていきましょう。

 従業員の年齢が比較的高いB社。ベテランスタッフのほとんどは、パソコンアレルギーで、顧客対応記録や、業務報告、シフト別の申し送り連絡など、あらゆる業務の記録が、手書で台帳に記入することで行われていました。
顧客管理名簿の数だけでも膨大な量で、電話がなるたびに、倉庫へ走っていって、そこからお目当てのファイルを見つけるまでがひと苦労、という状態でした。

 システム化にあたって、どのプロジェクトでもそうですが、私たちは、まず「豊富な経験と知識」が頭の中に蓄積されている業務担当者の方々からお話をうかがいます。
 みなさん、身体で業務を覚えているので、「言葉」で理路整然と業務をご説明いただくことは至難の業。そこで、実際にやっている仕事を一つひとつ、伝えられる範囲で聴いていきます。
 
 担当者からヒアリングしたことをつなぎ合わせて全体の業務の流れを構築し、まずは「こんな感じ」という試作版をつくります。

「パソコンアレルギー」を起こさないように、今の業務の流れをそのまま、紙をパソコンの画面に置き換えるイメージで、システムを開発していきました。

 こうしてできた試作品を、実際に使っていただきながら改良を重ねることで、担当者自身に使いやすいシステムに仕上げていくのです。
三か月後には、紙に記入するように入力でき、しかも必要な時には、検索するだけでその場で情報を呼び出すことができるシステムが完成。B社のスタッフは、事務所と倉庫の往復から解放されました。

 業務をデジタル化することの意味は、単純に紙の記録をデータベース化して閲覧性を高めることだけにとどまりません。
個人の頭のなかにあった貴重なデータや知識、豊富な経験をシステムにインプットすることによって、それを会社全体で共有でき、ほかのスタッフのデータや知識と組み合わせることが可能になります。

さらにそれらのデータを分析することで、近い将来に起こりえる事象の予測を立てることができ、事前に対策を練ることも可能になります。

B社では、システム化で事務作業の時間を約3割減らすことができました。その時間を、対外的な宣伝・営業に振り向けることで、売上がアップ。また、蓄積されたデータで販売予測を行い、それをもとに、新しいサービスを立ち上げることができました。

 一般的にシステム開発というと、「販売管理システム」、「在庫管理システム」、「営業支援システム」といったように、個別に業務の機能単位に開発します。しかしIT武器化思考は、そこで働く「人」に焦点を当て、その人に最適なIT武器をつくるという考え方なのです。

IT武器によって働く人一人ひとりをパワーアップさせ、会社全体を「少数精鋭部隊」に変貌させることで、人手不足を解消し、働き方改革を実現し、生産性を飛躍させ、利益率を向上させていく。それが倍速DXの願いです。

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